バレンタイントリップ。
チョコレートの海でおぼれそうになったKは、やっとの思いで岩までたどり着いた。しかし、チョコレートの波は次々におしよせてくる。モテすぎるKは「好きです」の甘ったるい告白に疲れ果てて、もうこれ以上泳げない。あぁもうだめだ…。と、その時、大きな船が近づいてきた。ビターチョコレートでできた黒い船だった。「乗りな」クールビューティーな彼女は知らないひとだったけれど、Kは藁をもつかむ気持ちで乗り込む。船は風をきって大空に進む。クールビューティーの横顔はまぶしかった。ふたりは同じ方向を向いていた。Kはやっと居場所を見つけた。このままどこまでも行ける気がした。二羽のカモメは新しいカップルの誕生を祝うように、じゃれあって歌いながら飛んでいく。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。