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嬉し悲し涙。

どのくらい、何の成分が入っているのかわからない。自分で流している涙が、どの部分から、どういう順路であふれ出てきているのか、わからない。理由があって流れる涙もあれば、理由もなく流れる涙もあるんだ。ものすごく嬉しい気もするし、悲しい気もするし、どちらも混ざっている気もするし。ただこころの奥の方で、何かが反応しているに違いない。涙は自分の気持ちより先に、気づいてくれる、わかってくれる。涙に抱きしめられるのも、わるくない。

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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気分の気分。

いい気分だけが、いい気分だとはかぎらない。気分にだって、気分はある。ほほえんでばかりだと、ほっぺたもかたくなる。ズンと落ちた気分は、すぐに触らずそのままに。じぃーっと眺めていたら、落ちついた気分がにじんできて。あぁいま、からだとじぶんがひとつになった。

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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だまされ上手なネコ先生。

ふぅーとほおづえついて。なかなか気分が上を向いてくれない、そんなときは。だまされ上手なネコ先生を見習おう。自分のシッポだとわかっていながら、自分のシッポをクルクルクルと追いかける。おっ?あっ!奇妙な動きをする自分のシッポに、キラキラキラと夢中になってみる。あなたもだまされたフリをして「うわぁ!これが噂の地球か!」と、ドアの外に吸い込まれてみませんか。

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com