地球最後の図書館。
あのこが本を読んでいる。ひとりで読んでいる。本当は隣に座りたかったけれど、僕にはそんな勇気などない。雨の音だけが響いている。僕はあのこの対角線上に位置する、一番離れた席に座る。(逆に意識しすぎかな)とおもったけれど、まぁいい。雷がバリバリと鈍い音をたてる。あのこは窓の外を見る。わぁ…という口のかたち。心配そうな横顔。何にもできない僕。もし地球が爆発したら、最後の瞬間をあのこと過ごせるのに。
あのこは本を閉じ、鞄にしまい、椅子を机にもどす。(あぁ帰ってしまうのか)立ち上がると、あのこは対角線上にある僕のもとへ近づいてくる。僕の心臓の音は、激しい雨音より大きくなっていく。まっすぐ前を向いて、あのこは僕の横を通り過ぎた。僕にはその1秒より細かい時間の粒が見えた。雨はますます盛大に降り出した。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています