水着を包む仕事をしている。
今月の水着はセパレートタイプだった。トップは明るいブルーで、胸元にはヨットの刺繍があしらわれている。ボトムは明るいブルーとホワイトの縞模様だ。先月の水着はパイナップル柄のワンピースタイプだった。大きなパイナップルと小さなパイナップルが、交互に描かれていた。私は水着工場で働いている。ラインに乗ってくる水着を受け取り、美しくたたみ、柔らかな紙で包む。それが私の仕事だ。工場は広い敷地に建っており、何十部屋もあるらしい。私は隣の部屋にしか行ったことがない。そこは水着を箱に詰めて発送する部屋で、一日じゅうラジオがかかっていた。私は友達に言ったら驚かれるくらいのお金を銀行に預けている。来月、私はそれらのお金を全部おろして、水着工場を辞め、3年前に出会った男のこを追いかけて南の島へ行く。そして一生ここには戻ってこないつもりだ。男のこが働いているカフェしか知らないけれど、もうそこにはいないかもしれないけれど、私はその男のこと結婚するような気がしている。男のこに会ったらHi!と手をあげて挨拶するだろう。その時の私はデニム生地のビスチェに、ベビーピンクのフレアースカートを着ていようとおもう。手にはバニラシェイクなんかを持っていたい。それからのことは成りゆきで。きっとうまくいく。工場の窓から太陽のヒカリが本格的にさしてきた。あと7分で昼の休憩だ。家から持ってきたベーグルサンドがある。この暑さでクリームチーズが溶け出していないかが心配だ。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。