217

スモールチーム。

誰にも知られたくない悩みも。

ほんとは褒めてもらいたい出来事も。

押し寄せてくる不安の影も。

口に出せない夢も。

悪いとわかっていても直せない癖も。

いざという時に欲しい言葉も。

平気な顔して平気じゃない瞬間も。

あなたのすべてを知っている人がいる。

あなたにぴったりとくっついて、

どんな時でも味方をしてくれる人がいる。

しぬまで一緒にいてくれる人がいる。

それは、あなたの中にいる、もうひとりのあなた。

世界で一番小さい、最強のチーム。

 

 

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

216

空のレストラン。

おひさまのやさしい匂いにうっとりしながら、仰向けにゴロン。のんきに浮かぶフワフワの雲を、スプーンでひとくち。シュッと口の中でなくなった。ほんのり甘い、お砂糖あじだ。ゆっくりと泳いでるうすーい雲も、スプーンですくう。冷たっ。こちらはソーダあじ。大きく広がるブルーの空も、味みしてみたいなぁ。スプーンより、ストローの方がいいみたい。チューーーーー。ん?パイナップル?見た目と違うから、ちょっとびっくり。そうだ、きっと昨夜のお月さまの味が、ブルーの空に残ってるんだとおもう。

 

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

 

 

215

ひとり、の、ぼく。

帰宅。空気。からっぽ。水やり(葉っぱに)。ビールやり(自分に)。ふぅ。窓がらり。月と目があう。ごくり。暗闇。こころの中。落ちてる自分。落ちつく。いいきもち。とても広い。漂う。泳ぐ。気持ち野放し。今朝見た夢。残ってる。輪郭。深い呼吸。宇宙。溶け込む。あ、可笑しい。月から見たぼく。どんな顔してる。

 

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

 

214

43秒のミステリー。

僕が指定した場所は、風の吹く断崖絶壁だった。見下ろすと、白い波が台風の目のように渦巻いている。彼女は黒いトレンチコートを着込んで、まっすぐに立っている。黒いカチューシャでおさえた髪が、派手に舞っている。僕はジャケットの内ポケットに準備したものを、さり気なく確認する。彼女の両手は、トレンチコートのポケットに突っ込んだままだ。彼女の左手が動きだすその瞬間、僕は内ポケットから小さな箱を取り出した。そしてゆっくりと蓋をあける。彼女はじっとその中を見つめている。口角を上げ、ゆっくりとうなずいた。僕のプロポーズは成功したようだ。彼女はモノクロームの空に左手をかざして、僕の耳元でそっと囁いた。「私の指、空けといてよかった」

 

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com