ピザの決断。
水色のフードトラックには長い行列ができている。彼はその一番後ろに並ぶ。太陽が真上から降り注いでいる。海はまだ見えない。日焼けした指先は、ポケットの中の小銭をジャラジャラと鳴らしている。空腹を示すメーターがもうほとんどゼロに近い。フードトラックのピザは4種類。大きな一切れサイズだ。彼はこころの中で「ソーセージ&ベーコンを1枚と、オニオン&マッシュルームを1枚ください」を繰り返している。自分なりの正統派でいこうとおもう。だんだんとそのセリフを告げる瞬間が近づいてくる。ついに彼の前に立つロングヘア男がオーダーする。「シーフードを1枚と、アンチョビ&ガーリックを1枚」彼の決心は大きく揺らぐ。ロングヘアの言い回しが、彼の胃袋を刺激する。なんて美味しそうなんだ。あっさりと決心を覆してしまいそうな自分に驚く。あと数秒で決めなければ。次の瞬間、口がどう開くか。彼さえもわからない。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。