サンドイッチ・ストリート。
彼は通りを歩いている。一本の大きな風が吹いてくる。空からニューヨークタイムズが飛んできて、足元に絡みついてくる。彼は前へ進めなくなってしまう。右足、左足、交互に踏み出すのだが、新聞紙が全力でせき止める。彼は帽子が吹き飛ぶのを恐れ、右手で素早く抑える。目を糸のように細めながら。しかし風の勢いはあっけなくゼロになる。新聞紙は何事もなかったように地面にへばりつく。ピンクとブルーのうさぎが新聞紙を拾い上げる。裕福なうさぎは新聞を読む習慣があると、昨日ラジオで聞いた。彼は空腹を思い出す。サンドイッチが食べられる店を探すことにする。「白いパンに常識というものを挟んであげるわ」と冷たい目線で言い放つ女給がいるカフェがいい。彼は全体で部分を知り、部分からだいたいの様子を知る訓練をしていた。雨がきそうな匂いを鼻の奥で感じながら、ジャケットの裏に刺した万年筆からブルーの液体が漏れていないか気がかりになる。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。