ハロー!エイプリル。
風にふかれながら、口笛を吹く。まっすぐ伸びる空に、雲はない。胸の真ん中には、無傷の夢。1分先のことはわからないけど、自分がいくべき未来はわかっている。リュックの中身も、ポケットも、ほとんどすっからかんだけど。瞳の奥の青い光は、誰にも負けない。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
風にふかれながら、口笛を吹く。まっすぐ伸びる空に、雲はない。胸の真ん中には、無傷の夢。1分先のことはわからないけど、自分がいくべき未来はわかっている。リュックの中身も、ポケットも、ほとんどすっからかんだけど。瞳の奥の青い光は、誰にも負けない。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
感覚が、身体を追い越していく。湧き上がるメロディを譜面に書き留めようとするが、どうしてもずれてしまう。もう我慢できない。苛立った彼は、鉛筆を放り投げる。10本の指は、白と黒の鍵盤の上を駆け巡りはじめる。自分の想像力を遥かに超えた音楽。自分が弾いているのではない。天と交信して弾かされているのだ。彼はそんな時の“自分の置き場所”を知っている。自分の姿を消すのだ。いや、確かに自分は居るのだが、何にも偏らず浮いている感じ。指が勝手に奏でる音の真ん中で、ただただぼんやりと呼吸をしている感じ。そこで卑しく自意識を持ち出すと、指は定型文のようなピアノ演奏に成り下がるだろう。芸術は孤独?もはや孤独の先には、本物の自由が待っている。決して誰も触ることができない、自由が。タイトルなんてつかない、自由が。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
太陽が月とバトンタッチした瞬間から、玉ねぎは細かく分解され、トマトはトマトソースになる。白いアパートには小さな灯りがともり、街の猫たちはあくびをはじめる。(勝手に)傷ついて、泣きそうだった昼間の出来事もだんだんと麻痺してきて、そんなことよりTVの洋画番組のオープニングに気を取られる。目の前には真っ赤な料理。逃げるスパゲッティを銀のフォークで丸めながら、生きていくことの自分の“しぶとさ”に少々絶望している。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
太陽をたっぷり浴びた色が、あのこの瞳をまぶしくさせるから。オレンジひとつくださいな。キューンとすっぱい匂いが、あのこのこころにノックするから。オレンジひとつくださいな。ジュっとはじけるやんちゃな果汁が、あのこのカラダを元気にかけめぐるから。オレンジひとつくださいな。あのこの心配ごとを、宇宙のすみっこまで飛ばしてほしいから。オレンジひとつくださいな。あのこのかなしみを、んんんー♩って口笛にかえてほしいから。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
動きが鈍くなってきたら、熱々のピザを与えてみてください/ネガティブ思考になっていたら、睡眠不足を疑いましょう/〜するべき!より、〜は楽しそう!と誘ってください/落としたら、3秒以内に拾いましょう/エラーが続いたら、赤ワインで充電してください/毎晩、お風呂で丸洗いしてください/たまに大げさに褒めてください。長持ちします
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
無理やり気分を上げようとすると、ますます下降線をたどるし。放っておいたら、下がったまま動かない。どんどん冷たく固くなっていく。いよいよ「下がったままでいいや」ってひらきなおると、何かがほどける。窓を開けたくなる。空を見たくなる。深呼吸したくなる。気分の温度が少しだけ上がった、気がする。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
赤ちゃんもネコも、身体がやわらかい。だから、つまずいても怪我をしない。赤ちゃんもネコも、頭の中がやわらかい。だから、明日の心配なんてしない。赤ちゃんもネコも、手のひらがやわらかい。だから、すぐに握手を求められる。赤ちゃんもネコも、遠くをじいーっと見つめてる。だから、神秘的で惹かれてしまう。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
こころの中がからっぽになって、ヒューっと風が吹き抜けていく。なんにも持っていないなぁ、確かなものがひとつもないなぁと、かなしくなったら。こころの奥にある、あの箱をあけてみよう。むかし言われた、うれしかったコトバ。大事にしてくれた、もういない人の笑顔。でてくるでてくる、しあわせのストック。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
チョコレートの海でおぼれそうになったKは、やっとの思いで岩までたどり着いた。しかし、チョコレートの波は次々におしよせてくる。モテすぎるKは「好きです」の甘ったるい告白に疲れ果てて、もうこれ以上泳げない。あぁもうだめだ…。と、その時、大きな船が近づいてきた。ビターチョコレートでできた黒い船だった。「乗りな」クールビューティーな彼女は知らないひとだったけれど、Kは藁をもつかむ気持ちで乗り込む。船は風をきって大空に進む。クールビューティーの横顔はまぶしかった。ふたりは同じ方向を向いていた。Kはやっと居場所を見つけた。このままどこまでも行ける気がした。二羽のカモメは新しいカップルの誕生を祝うように、じゃれあって歌いながら飛んでいく。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
色合わせがむずかしくても、一目惚れのバッグを買う/夕飯が近いのに、大きなドーナツを食べる/明日は試験なのに、もう寝てしまう/肌が弱いのに、真っ黒に焼いてしまう/次が決まってないのに、とりあえず会社を辞める/雨に気がついても、傘を取りに戻らない/フラれるのがわかっていても、まっすぐに告白してみる/ダンドリよりも、ホンノウを!
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。
自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。
でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。
そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。
広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。
color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com
◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。
イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com