シャンプー台から宇宙旅行。
ぐぅーっと背中が倒れ、ふわりとガーゼで視界が隠れたら、宇宙船は旅にでる。フローラルな香りに包まれながら、上へ上へと登っていく。日常の指紋は流れ落ち、凝り固まった思考は溶けていく。身体とこころがきりはなされ、自分の感覚だけがゆらゆらと星空とダンスをする。そして、たったひとつのこたえが見つかった。コノヨハ、ダイジョウブデ、デキテイル。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
ぐぅーっと背中が倒れ、ふわりとガーゼで視界が隠れたら、宇宙船は旅にでる。フローラルな香りに包まれながら、上へ上へと登っていく。日常の指紋は流れ落ち、凝り固まった思考は溶けていく。身体とこころがきりはなされ、自分の感覚だけがゆらゆらと星空とダンスをする。そして、たったひとつのこたえが見つかった。コノヨハ、ダイジョウブデ、デキテイル。
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100回飴玉を渡すよりも、ひとこと「あのときはゴメン」とあやまりたい。100回こころで感謝するよりも、ひとこと「あのときはアリガトウ」とつたえたい。100回絵文字を送るよりも、ちょくせつムギュッと抱きしめたい。100回昔話するよりも、恥ずかしい未来の夢なんかを語り合いたい。むずかしい変化球もいいけれど、笑っちゃうほどストレートな一球はこころにクル。
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せっかく入ったレストランは、調理場からシェフの怒鳴り声が響いてくる。これじゃ味なんてしない。オムライスの最後の一口を、無理矢理飲み込んで店を出る。あーあ、今すぐシアワセになりたかったのに。胸の奥に居座るストレス、どこで癒せばいいんだろう。ん?足元にはミルクティー色のネコさん。長いしっぽを絡めてくる。しゃがんでネコさんを撫でようとしたら(こっちだよ!)と、すっと前を歩いていく。ネコさんの後ろをついていくと、裏通りの小さな公園に着いた。ネコさんは木の下のベンチに飛び乗り、ゆっくりと身繕いをはじめた。私も隣に座る。ふーっ。ここは風の通り道だった。気持ちいい。木陰に守られた秘密のオアシス。水彩画の青空はどこまでも広がっている。ビージーエムは元気な蝉の声。世界はこんなにもおだやかだった。私、いろんなことに振り回されていたみたい。胸の奥のかたまりが、ゆっくり消えていくのを感じた。ネコさん、ありがと。今すぐシアワセになれました。
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カミナリ?とおもったら、花火だった/怒られる!とおもったら、出張の依頼だった/人だかりは火事?とおもったら、虹がかかってた/パンが落ちてる!とおもったら、ネコだった/夕方の6時?とおもったら、早朝の6時だった/フラれる!とおもったら、告白だった/シャーベットとおもったら、アイスクリームだった/地球かぁーとおもったら、火星だった◎
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〜♪おとといの悩み覚えてる/去年の今ごろ何に悩んでいたか覚えてる/ほらねほらね/私たち忘れっぽいのが特長です/だからだから/明日の心配いらないね/未来は未来にまかせましょ/ピューピューピュー(ある方が吹くくちぶえに歌詞をつけました♪)
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どうしたの。ため息ついているの。泣いているの。ちからがでないの。スポットライト、どこにあててる。かなしみばかりを照らしていない。でも、ほら。こんなにいいことも、こんなに楽しみなことも、こんなにめぐまれてることも、あるね。ヒカリがあたっていないだけで、にっこりなこと、たっぷりあるね。あなたの照明係は、あなただからね。
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アドリブの歌を口笛で吹くこと。芝生の上をゴロゴロしてみること。おにぎりもサンドイッチも両方食べること。ダルマサンガコロンダ!って100年ぶりに叫ぶこと。太陽のヒカリをサングラスなしで浴びること。炭酸のチクチクを喉に流し込むこと。残した仕事のことを思い出さないこと。ピョンピョン飛び跳ねてみること。おてんばに戻ること。
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本屋の一番奥にある『人間失格』の背表紙を指で押すと、その棚は回転する。と、目の前に暗闇のバーが現れる。マスターが振るシェイカーの響きだけが、空間の輪郭をあらわしている。しだいに目が慣れてくると、数百冊もの本が天井まで並んでいることに気がつく。カウンターには常連の女優が座っている。彼女は紫色の着物に銀色の帯、細い腕のたもとからは赤い襦袢が見え隠れする。逆三角形のグラスには、氷の星屑が舞うギムレット。女優は本の表紙を眺めながら飲んでいる。このバーに存在する書物は全てが初版本だ。コレクターが知ったら、震えてしまうほどの希少なものばかりだ。しかし本を手に取りページをめくる客はいない。本というプロダクトに囲まれることも”読書”のひとつだという、このバーの意図を理解しているのだ。この世で最も贅沢な読書なのだ、と。
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こころの中に居座っている、おもーい問題。シクシクと痛みだす、むかし言われたあの言葉。だんだんせまってくる、ユウウツな予定。影のようについてくる、ぼんやりとした不安。あなたをくすませているものぜーんぶを、ノートに写し出してみよう。コツコツと鉛筆動かして、真っ白なノートを真っ黒にしよう。手が疲れたなーと感じたら、合図です。スーッと風が通ります。空が広いなーと気づきます。あなたのシミ抜き、無事完了したようです。
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雨宿りするふりして、渡り廊下で彼を待ってる。偶然をよそおって、一緒に帰る作戦なのだ。放課後は泣きたくなるほど静か。雨の音はだんだんと小さくなっていく。(お願い、雨よ、もう少しだけ降り続けて)私のカバンの中には小さな傘が入っていること、彼のことが世界一好きなこと。雨粒をのせてまばたきするあじさいの花びらに、私の秘密をそっと隠しておこう。
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ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。
自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。
でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。
そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。
広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。
color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com
◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。
イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com