自然ジム。
澄みきった空気をスーーハーー、からだじゅうに送り込む。輝く水をゴクリゴクリ、皮膚のずっと奥まで染み込ませる。大地の上をピョンピョンピョン、骨が喜んで前へ前へ。あのモヤモヤは、ポーンと空に飛ばしちゃお。生きてるだけで、鍛えてる。生きてるだけで、めぐってる。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。
澄みきった空気をスーーハーー、からだじゅうに送り込む。輝く水をゴクリゴクリ、皮膚のずっと奥まで染み込ませる。大地の上をピョンピョンピョン、骨が喜んで前へ前へ。あのモヤモヤは、ポーンと空に飛ばしちゃお。生きてるだけで、鍛えてる。生きてるだけで、めぐってる。
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屋根裏部屋で目玉焼きを焼いていたら、小鳥さんが窓をつつくものだから、あ、ちょっと待って!と叫んだの。なのに、小鳥さんはつつくのをやめないから、しかたなく振り返ると。お空に大きな目玉焼きが、ゆっくりゆっくりと流れていくではありませんか。黄身の上に寝そべったネコのリリックが、こちらに手を振っている。おーーーい!私は急いでフライパンを取りにいって、これこれ!と、いい焼き加減の目玉焼きを見せた。偶然ってあるものだ。小鳥さんは満足げに片目を閉じて、お空に高く飛んでいった。
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落ちに落ちたとき、絶望の一番底にいたとき。まさか、数ミリ先にヒカリが待っているなんて、思うはずもなく。特殊なブザーが聞こえない限り、真っ暗な液体に飲み込まれていくのだと。重くて、トロリと、深い、闇。それでも息だけは、する。息だけは、する。と、ちいさな風が吹いてきて、ちいさな風景が見えてきて。ものごとはずっと続かないのだ、ということに気づく。いいことも、よくないことも、ずっと続かないことを知らされる。細胞だって、いま、新しいものがうまれた。
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ぽつりぽつり語ったあと、シーンと沈黙。突然、ひとりが思い出し笑い、からの、ふたりで大笑い。からの、シーン。こんな感じのサシ飲みって、ゼイタク。いいこと報告しなくちゃ、とか、久々会ったんだから面白い相談を披露しなくちゃ、なんて必要ない。つまらないのが心地よい、ぼんやりサシ飲み、いかが。
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お湯をシューシュー沸かしながら、じぶんの中をパトロール。じぶんの中にぐんぐん潜って点検ちゅう。頭の中は思考のしすぎで少々空回りしているなぁ。(お疲れ気味だなぁ)目の奥は新しい風景を見たくてうずうずしてる。(感動的な景色見せてあげたい!)こころは頭と同じ方向むいていなくて、意外にもどっしりずっしりと落ち着いてるみたい。(もう少し軽くなってもいいなぁ)両足は寒空の中、いまにも駆け出しそう!(おぉ元気!)じぶんのカラダの中のみんな〜。それぞれ声かけあって、もうひとがんばりしちゃおう。
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いきていると、まようね。じぶんのこと、わからない。なにをほしいかも、わからない。ほしいものは、あるはず。ほしのかずほど、あるはず。でも、いちばんほしいもの、なんだろ。いちばんほしいもの、わからない。ひとつ、ふたつ、かぞえてみる。まっくらなよぞらに、かぞえてみる。ひとつ、ふたつ。わからない。
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TOKYOの端っこのバルでアルゼンチンタンゴに身を任せながら、シードルを2杯。ジャン=リュック・ゴダールの映画で何が一番好きかという話題を盗み聞きしながら、ジントニックを1杯。先輩がステンカラーコートを頭までかぶって雨の中に駆け出していった光景をリマインドしながら、ラフロイグのロックをすすっている。どこにも着地しない思考の自由。つづく。
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秋風はあのこのほっぺためがけて”ぴゅーっ”と吹いた。かなしいことの後は、うれしいことあるよ!って伝えたかったから。そして、かなしいことの中身は、うれしいことの種が混ざってるよ!って伝えたかったから。あのこは目を細めて迷惑そうにしている。その顔があまりにも可愛らしかったから、秋風はもうひとつ小さな風をおでこに吹きかけた。大丈夫だよ!
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車道側を歩け。歩く速度を彼女にあわせろ。何が食べたい?って聞け。沈黙を恐れるな。(しゃべりすぎるな)服を褒めろ。化粧は褒めなくていい。友達から言われた注意事項を頭の中で繰り返しながら、僕はデイトの待ち合わせ場所に向かっている。ただ問題なのはエラそうな友達も、デイトの経験が一度もないことだ。
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数十年会わなかった友達と会った。1秒でむかしに戻れた。数十年ぶんの時間なんて、ひょいと越えられた。もう目が笑ってる。冗談を言わなくても、すべてが冗談みたい。面白くてしかたない。面白すぎて目に涙がふくらんできたよ。
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ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。
自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。
でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。
そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。
広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。
color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com
◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。
イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com