白いボールと惑星。
夕方がいよいよ終わりに近づき、夜が始まりそうな時間、彼は友達とキャッチボールをしている。薄暗い空間にボールが一瞬見えなくなるから、取りにくくてしょうがない。相手が投げた高めのボールは、グローブをかすめて草むらまで飛んでいってしまった。「わりぃ!」と叫ぶ友達の声に、片手を上げて(大丈夫!)と合図をすると、くるりと向きをかえ走り出す。
草むらに入ると長い葉っぱが、半ズボンのふくらはぎをチクチクと刺してくる。湿った土の匂いが鼻の奥に届く。白いボールはなかなか姿をあらわさない。顔をあげると、世界は真っ黒と深いグレーでできていた。その瞬間、彼は“たったひとり”だと感じた。