野菜を狩りにいく。
喉も身体も水分を欲しがっている。いまはゴクゴクと飲み干す冷たい水ではなく、シャリっと噛みつくと口の中でプシュッと弾ける新鮮な野菜を欲しがっている。彼女はスーパーマーケットに入り、赤いカゴを掴みとった。
最初に目があったのは春キャベツ。やわらかそうな葉っぱは、密やかな夢をくるんでいるようだ。にょっきり芽を出してジャーン!とデビューしたアスパラガスは、アイドルみたい。セロリのフサフサの葉っぱは、オイルでさっと炒めてモリモリ食べてやろう。パンとハリのある元気なニンジンは、ポリポリ片手で味わおう。
BGMが“蛍の光”に変わったことも気づかず、彼女は野菜をカゴに収めていく。目は爛々と輝き、口角は少しだけ上がっている。