深夜のエアポート・ポートレイト。
空港にはほとんどひと気がなかった。さっきから最終便の案内が、繰り返し聞こえてくる。軽食を食べられるレストランや売店は、どこもシャッターが降りていた。(彼は夕食を食べてこなかったことを少し後悔した)真っ赤な制服を着て、同じ髪形をしたキャビンアテンダントたちが早足で横切っていく。何語かはわからなかったが「今夜何食べる?」と、言い合っている気がした。彼は早く飛行機に乗り込んで、さっさと離陸したいとおもった。異国でゼロから始める自分と、この空港のゆったりしたムードがとてもチグハグな気がしたからだ。足元のコンバースはおろしたてだった。彼は急に気恥ずかしくなった。さっさと汚したいとおもった。