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ネコさんはシアワセの天才。

せっかく入ったレストランは、調理場からシェフの怒鳴り声が響いてくる。これじゃ味なんてしない。オムライスの最後の一口を、無理矢理飲み込んで店を出る。あーあ、今すぐシアワセになりたかったのに。胸の奥に居座るストレス、どこで癒せばいいんだろう。ん?足元にはミルクティー色のネコさん。長いしっぽを絡めてくる。しゃがんでネコさんを撫でようとしたら(こっちだよ!)と、すっと前を歩いていく。ネコさんの後ろをついていくと、裏通りの小さな公園に着いた。ネコさんは木の下のベンチに飛び乗り、ゆっくりと身繕いをはじめた。私も隣に座る。ふーっ。ここは風の通り道だった。気持ちいい。木陰に守られた秘密のオアシス。水彩画の青空はどこまでも広がっている。ビージーエムは元気な蝉の声。世界はこんなにもおだやかだった。私、いろんなことに振り回されていたみたい。胸の奥のかたまりが、ゆっくり消えていくのを感じた。ネコさん、ありがと。今すぐシアワセになれました。

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com