ネコさんはシアワセの天才。
せっかく入ったレストランは、調理場からシェフの怒鳴り声が響いてくる。これじゃ味なんてしない。オムライスの最後の一口を、無理矢理飲み込んで店を出る。あーあ、今すぐシアワセになりたかったのに。胸の奥に居座るストレス、どこで癒せばいいんだろう。ん?足元にはミルクティー色のネコさん。長いしっぽを絡めてくる。しゃがんでネコさんを撫でようとしたら(こっちだよ!)と、すっと前を歩いていく。ネコさんの後ろをついていくと、裏通りの小さな公園に着いた。ネコさんは木の下のベンチに飛び乗り、ゆっくりと身繕いをはじめた。私も隣に座る。ふーっ。ここは風の通り道だった。気持ちいい。木陰に守られた秘密のオアシス。水彩画の青空はどこまでも広がっている。ビージーエムは元気な蝉の声。世界はこんなにもおだやかだった。私、いろんなことに振り回されていたみたい。胸の奥のかたまりが、ゆっくり消えていくのを感じた。ネコさん、ありがと。今すぐシアワセになれました。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。