おろかなインタヴュー。
空港の一角がインタヴュー会場となっていた。たくさんのマイクが、機関銃のように二十歳になったばかりの女優に向けられる。「なぜ助演女優賞を辞退したのですか?」「監督と折り合いが悪かったのは本当ですか?」「共演者とのロマンスが噂されていますよ!」女優はただ黙っているだけなのに、透けてしまいそうな端正な肌と、絶望的に美しいオニキスのような黒い瞳が、人を小馬鹿にしているかのように映ってしまう。相手の劣等感や嫉妬心を、盛大に煽ってしまうのであった。女優のエナメルチックな唇が少しだけ動いた。記者たちは口をつぐむ。「私がこれから乗るジェット機には、バスルームがついてるの」まったく質問の答えになっていない。記者たちは再び投げかける。「さすが大女優!飛行機のランクが違いますね」女優ははじめて目を見て答えた。「おろかな質問で身体が汚れたわ。全部洗い流します」女優はゆっくりと歩き出した。カメラマンたちは一瞬仕事を忘れたが、完璧な後ろ姿にシャッターを切った。何枚も、何枚も。
fin
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新されています。