夜中のおこりんぼう。
のどに、ずっと、あのひとの言葉の骨がチクっと刺さっていて。ずっと、飲み込めなくて。でも、ずっと、放っておいたんだ。そうしたら夜中に突然、ズキズキと暴れだして。言葉の骨が、痛くて、痛くて。ようし!明日になったら“こういう風に言ってやろう!”“いや、こういう言い方のほうが効くかも!”あのひとをこらしめるアイデアが、ばんばん出てきて、おこりんぼうのまま眠った。朝になった。カーテンから、やわらかなヒカリが透けている。あのひとの顔が浮かんできた。(ニコニコ微笑んでいる顔だった)これまで、あのひとが自分にやってくれたモロモロを思い出す。“あの言葉は、そういう意味じゃなかったのかも”のどにひっかかった骨は、どこかへ消えていた。夜中のおこりんぼうは、もうどこにもいない。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。