スクリーンテスト。
娘はハリウッドに歩いてやってきた。夜空の星を齧り、太陽を舌でころがしながら。人をメロメロにする技術をポケットに入れて。そしてあっけなく大物プロデューサーと出会う。「スクリーンテストをしよう」スタジオはひんやりとしていた。3台のキャメラは彼女をとらえる。なんの演技もするな、というルール。顔と身体の骨格をみるのが目的らしい。キャメラがぐっと近づいてくる。彼女は睨みつける。そして左目に涙の玉が膨れ上がると、透明に輝きながら頰の上をツーっと滑っていく。なんの演技もしないなんて、彼女にはできなかった。そうしないと数分のスクリーンテストが、退屈でたまらなかったから。fin
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。