
砂糖少々。
文房具屋の娘はプンプン怒ってばかりいたので、あたたかいミルクを足してまろやかに調整した/プールの監視人のお兄さんは失恋がこたえていたので、メロドラマを上映している映画館の前は下を向いていて歩いた/素直に後輩を褒めることができない女史は、世界をぼんやり映したくてコンタクトレンズを捨てた/ヨット柄のサマードレスを着た寮暮らしの大学生は、ブラックコーヒーに砂糖少々をかき混ぜた/彼の前ではしっかり者に演じてしまう自分を、少しでも甘めにしたかったから/みんないろんな工夫しながら生きている
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。