食堂車の揺らぎ。
糊のきいた白いテーブルクロスの上でメニューを熟読した結果、オムライスに決定!と(空腹の)腹を決めた瞬間、列車は急カーブ。グラリと身体が傾く。グリーンのガラス瓶に刺さった一輪の黄色いバラも、グラリ。やっぱりエビフライもいいな、と決心までが傾く。列車の中でサクサクと咀嚼する陽気なエビフライは、旅のテンションまで上げてくれるに違いない。いや、それとも最初にピンときたチキンカレーに戻るべきか。スパイシーな辛味と風味で、旅の五感を冴えざえと震わせたかったのだった。隣のテーブルのご婦人に運ばれたてきたのは、ハムサンドとカフェオレ。銀の盆に盛られたハムサンドからは艶々とマヨネーズがはみだしているし、揚げたてとおもわれるフライドポテトは黄金色に輝いている。あぁ、自分はこんなにも優柔不断な性格だったのか。頬杖をついて窓の外に広がる青い湖に想いを馳せていると、突然真っ暗なトンネルに突入。ゴーーーッという鈍い音とともに、食堂車の白っぽい照明が一人旅の心細さを誘う。よし、トンネルから出るまでには決断するのだ。今、一番食べたいものは?!(さて、主人公は何を選んだのでしょうか)
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。