ラジオデイト。
黒いギンガムチェックのワンピースの彼女と、モスグリーンのセーターを着込んだ彼は、それぞれのコーヒーを目の前に置いたまま黙り込んでいる。彼女は遠くの空を眺めているし、彼は自分の手のひらをじぃーっと見つめている。と、突然、ふたりは同時に笑いだした。見つめ合って笑いだした。恋人たちはカフェに流れるラジオに夢中だった。ディスクジョッキーも可笑しくてしかたない、といった風の喋り方だった。秋の一番最初の日、午後のことだった。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。