夕焼けに溶けた恋。
先輩に彼女ができたらしい。
密かに憧れ続けていた先輩。
部活で会うと妹みたいにからかってくる先輩。
本当は兄ではなく、彼氏になって欲しかった。
学校の帰り道、ひとり夕焼けの街を歩く。
先輩の彼女なら、きっと美人なんだろうな。
きっと大人っぽくて、頭がよくて。
「おぅ!」後ろから頭をポンと小突いたのは、先輩だった。
私はいつもの軽いジョークを飛ばそうとしたけれど、何も出てこない。
先輩は(ん?)と首を傾げて私を覗き込んだあと、ぐんぐん前を歩いていく。
先輩の背中が、オレンジ色に溶け込んでいく。
先輩は今この瞬間も、彼女のことを考えているのだろうか。
私の小さな恋が見えなくなっていく。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。