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まぶしそうな目のあのこ。

クラスで3番目くらいに人気のあのこのことを、僕は学年でダントツ1番可愛いとおもっている。いや学年どころか、テレビや映画に出てくる人気者よりも可愛いとおもっている、正直言って。あのこの目はいつもまぶしそう。目の中に、キラキラ光る宝石が入っているに違いない。あんなに綺麗な目をしているおんなのこを、僕は他に知らない。たとえば電車にあのこが乗ってくるとする。するとその瞬間、電車の中が異次元の空間に変わる。つり革につかまっているサラリーマンも、漫画を読んでいる小学生も、ロマンチックな物語に出てくる大切な脇役になる。電車の窓から動き出す景色を、あのこがまぶしそうな目で見る。目から湧きだすヒカリが、ゆっくりと電車の中を満たしていく。とてもしあわせなメロディを奏でるように。(どうしてみんなそのことに気づかないんだろう)勉強もスポーツもぱっとしない僕だけど、あのこの魅力を世界一わかっている自信がある。だから僕は、ドキドキして、あのことほとんど口をきけない。

 

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com