夕立の味。
ゴロゴロゴロと空がうなっている。雲は眉間にシワをよせている。彼女は走り出す。シャンシャンシャン。背中のランドセルがリズムを刻む。筆箱と教科書も一緒に跳ねている。ゴロゴロゴロがいよいよ大きくなってきた。
ザーーーーーーーーザーーーーーーーーザーーーーーーーー
とうとう空は泣き出してしまった。大きな涙がたくさん落ちてくる。街じゅうの色がどんどん濃くなっていく。女子高生たちが「キャー!」と大騒ぎしている。彼女は走るのをやめて立ち止まる。泣き狂う空を見上げる。口をアーンとあけてみる。涙の味を確かめてみる。コップの水よりあまい気がした。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。