パーマネントサマー。
天井でまわるプロペラが、ぬるい風を送っている。バーテンダーの振るシェイカーが、頭の後ろを心地よく刺激する。彼女はパズルを解いている。考えるのが不似合いな彼女には、向いていない遊びだ。彼はゆっくりと立ち上がり、ピンボール台の前に立つ。ガラス面に映る彼は完璧に美しかった。年をとる気配など1ミリもない。この顔がこの腕が、しなびていく予感などない。誰かが言った、人生は春夏秋冬だと。でも、彼の一生は夏しかない、と本気でおもう。明日のこともわからないのに、未来のことなど想像できるわけがない。何も決めたくない。ピンボールは景気良く弾き続け、オレンジと紫のヒカリが交互に瞬いている。夕暮れが降りてきて、空の色がやっと彼のこころと馴染んできた。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。