ロックなルックス。
カウンターの中にいるマーシャルのロゴ入りティーシャツの彼女は、自分が一番魅力的に見えるサイズを熟知しているらしかった。まるで身体のラインが浮き彫りになっている。ライブハウスはいつだって大音量なので、お客は大声で叫ばないとアルコールを注文できない。マーシャルの彼女は目をあわせて頷くと、手際よく注文通りのものを作っていく。
照明がレッドに変わった。鈍いベース音が肚の底に直接伝わってくる。マーシャルの彼女はカウンターを軽やかに飛び越して、ぎゅうぎゅう詰め客の波をかき分け、ステージのうえに駆け上がった。白い照明は彼女だけに明るく降り注いだ。ゆっくりと銀色のギターを抱えると、Eマイナー7をかき鳴らす。(私が私でいられる場所はここ)オーディエンスの森は大きく揺れる。彼女は自分という材料を使って、人を惹きつける技を熟知していた。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。