ワン・エル・ディー・ケー。
荷物はすべて運び終わったものの、
部屋の中にはベッドくらいしか陣取っていない。
冷蔵庫も食器もない。(マグカップだけは持ってきた)
彼は本気で気に入ったもの以外、置かないことに決めていた。
そんな生活にずっと憧れていた。
自分だけの居場所。自分だけの世界。
彼は部屋の中を歩き回る。
いつしかスキップになっていることに気づく。
フローリングにすれる靴下の感触が、実家を思い出させる。
彼は靴下を脱ぎ捨て、裸足になった。
これでいい。ちょっと不良な男は家で靴下など履かないのだ。
冷んやりした窓に顔を近づけてみる。外はほとんど深夜だった。
そこに映った自分はとても痩せていて、黒目がぬれっと輝いていた。
ラジオから突然、アナーキー・イン・ザ・U.K.が流れてきた。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。