ひみつの読書。
真っ暗な部屋に、ちいさな電球をひとつ灯す。
洗った髪の毛はまだ乾いていないけれど、勢いよくベッドにもぐりこむ。
そして、ゆっくりと本をひらく。
あのこがぼくに貸してくれた本。
このことはクラスの仲間も親友も誰も知らない。
ひと文字、ひと文字、あのこがたどった文字をぼくが後から重ねていく。
ずっと昔に書かれた本。
物語の中に入り込んで、ふたりで旅をしているようだ。
ページが少しへこんでしわになっている。
あのこがめくった指の跡だと知る。
その瞬間、夜空をアーチ型の光線が走り、
あのことつながった、気がした。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。