91

今日の仕上げはマルゲリータ。

目覚まし時計を床に落としたまま、はっと起きたら会議に遅れて、私の番でコピー機は壊れてしまうし、作った書類は計算まちがい、クリップを指に刺してしまうし(うっ!)、自販機から転がってきたのはぬるいウーロン茶だった。(あつあつが飲みたかった)でもね、18時のベルが鳴ったらくちびるにイチゴ色のグロス塗って、ミルクティー色のエナメルブーツに履き替えて、信号のギリギリ青を渡りきり、にんまり笑顔の恋人にゴール。トマトとチーズの大合唱、マルゲリータピザにゴール。とろりチーズを追いかけて、口の中がマルゲリータ。(あちっ!)マルゲリータで私の今日は大勝利。マルゲリータは私を救う。

1
TOP
CLOSE

電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com