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銀色のパーティー。

マリィがラウンジにあらわれると、一瞬で空気の色合いが変わる。美女たちは“マリィなんて興味ない”というポーズを崩さないまま、黒目の端っこで0.1秒視線をおくる。(そっとマリィを確認する高度なテクニックだ)

銀色に染めたショートヘア、アーモンドのカタチをした大きな瞳。痩せた身体に白い包帯を巻きつけて、氷の塊から削り出したような透明のハイヒールを履いていた。それがマリィのドレスコード。

いつも隣にはニューヨークゴシップの真ん中で華を咲かせている、ハンサムなボーイフレンドを2人か3人たずさえていた。美しさと富を競い合う女性たちの嫉妬と興味が、マリィに集中するのは当然のことだろう。マリィはカクテルに浮かんだ真っ赤なドレンチェリーを口に入れると、ソファーから立ち上がる。

マリィはひとつのパーティーに20分以上居られない、という癖が直らなかった。次の会場、そしてまた次の会場へ。タクシーを拾わなくちゃ。楽しい場所はもっと他にあるはず。マリィが去った後には、必ず銀色の粉が床に落ちていた。マリィは人間ではないのかもしれない、という噂がたちまち広がっていく。

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com