
脳のお腹が空いている。
彼女は家の中の本棚の前で“立ち読み”をしている。
お腹を空かせた脳が、何か新しい刺激を欲しがっている。
でも。あれほど夢中になった純文学も、
あれほど憧れたモデルのスタイルブックも、
たちまち大金持ちになれるハウツー本も、
まったくトキめくことができない。
パラパラとページをめくっては本棚に戻す、をずっと繰り返している。
彼女はあきらめて冷蔵庫をあけ、プリンの残りを胃袋に入れる。
財布を持って外へ出ると、細い三日月が浮かんでいた。
そろそろ本屋に、脳の栄養を仕入れに行くタイミングらしい。
*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。