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フィッティングルームで洋服と格闘しているみなさんへ。

上空からおしゃべりしてもよいですか。

(私は雲ひとつない空を、ヘリコプターで移動しています。)

 

もう立派な大人たちが、普段とは違う、

無防備であどけない顔をしている場所ってどこだと思いますか。

 

それはデパートメントストアのフィッティングルームですよ。

いまパイナップル柄のワンピースから顔をだしたあなたもそう。

スキニーなパンツのジッパーが上がらずに、

ため息をついているあなたもね。

後ろ姿のラインを一生懸命確認しているあなたもね。

会社でプレゼンテーションをしている時も素敵だけれど、

鏡の前でひとりっきり、真剣そのもののあなたはとてもチャーミング。

(誰にも見られていない、素のあなただ!)

 

あのね10秒後にフィッティングルームの屋根がパカッと開きますので、

その瞬間私に手を振ってみてくださいね。

ヘリコプターから私も手を振りますね。

さぁ、1、2、3…。

 

そして世界中のフィッティングルームパーティーが、

1分間だけ行われた。

 

 

 

*「電車は遅れておりますが」は毎週火曜日に更新しています。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com