領収書は格好いい。
彼女はランドセルを自分の部屋の所定のフックに掛けると、デスクに座る。先週、文房具店で買ってもらった領収書をめくってみる。彼女は複写ができるカーボン紙付きの領収書に、ずっと憧れていたのだ。ママは「どうしてこんなものが好きなの」と不思議そうな顔をしていたっけ。カーボン紙のインク部分の匂いをかいでみる。大人っぽいフォーマルな匂いがした。
ミシン目がついた控えには、薄い緑色の模様が描かれている。お寺で見たお釈迦さまの後光のようなデザインだった。この一枚を切り離すときの、丁寧な手の動きにも憧れていた。ママがお店の人から領収書をもらう時、彼女はひとつひとつの動作を一瞬たりとも見逃さなかった。さっそくボールペンで数字を入れて、ミシン目から切り離してみたかったけれど、彼女にはもったいなくてとてもできない。