
リボンはわたしに。
彼女はこころが少々くたびれていたので、夕食は自分を甘やかすことに決めていた。駅の改札を出ると、まっすぐリカーショップに立ち寄る。ワインが並ぶ棚の前に立ち、1本の赤のチリワインを選び取る。いつものワインより高価だったが、エチケットのデザインを見て直感で決めた。レジに進むとふくよかな女性店員が「贈り物ですか?」と歌うように尋ねた。彼女の口は「はい」と答えてしまう。(彼女自身が驚いた)リボンはピンクとシルバーで迷ったが、シルバーにした。女性店員のふくよかな手が、シルバーのリボンをていねいに結んでいく。今夜のワインが自分へのプレゼントになっていく。頭の後ろの方にある重いものが、すーっと抜けていくのを感じた。