
無口な地球で小さく息をしている。
真夜中に窓をあけると、街は真っ白な雪でコーティングされていた。どうやら地球は一時停止ボタンを押したらしい。人が暮らしている気配が消えた。音も、色も、完璧に消えた。深呼吸してやろうと、腹の底から空気を吸い込もうとしたが、半分のところで止めてしまう。地球の別の顔をうっかり見てしまった“遠慮のようなもの”から、それができなかったのだ。さっき淹れたブラックコーヒーの香りだけが、生活者としてのリアルを保っている。しんとした地球に、間借りさせてもらっている自分が、ただ佇んでいる。