魅力の量り売り。
その店はかつて、肉屋だった場所をリノベーションしたのだった。壁を真っ白に塗り、木のカウンターを作り、赤いドアをしつらえて、青いカナリアを飼った。透明の瓶にはいろんな“魅力”が入っていて、1グラムから量り売りをしている。
嵐の午後、若い娘が“小悪魔”を20グラム欲しいと訪ねてきた。店の主人は「15グラムくらいにしときな。小悪魔が悪魔になっちまう。」と言った。「そんなことない、大丈夫。どうしても今夜、小悪魔にならなくちゃいけないの。」と娘。主人は “小悪魔”を10グラムに、こっそりと“素直”を10グラム足して渡した。いつの間にか風はやんでいた。カナリアが美しい声で鳴いた。