遠くの森はどんなあじ。
ぐらぐらとたぎる湯の中に、大小さまざまにカットされたブロッコリーを投入する。やんちゃに踊っているそれらは、深いグリーンから明るいグリーンに変わる。この一瞬を見逃してはならない。素早くザルにあげる。白い湯気が逃げる。平らな皿に豊かに盛り、岩塩を少々とオリーブオイルをまわす。テーブルに座る。ちょうど目の高さに森が見える。“緑を見ながら食事ができる”のが、この部屋を決めた理由だった。ブロッコリーは突然舞台に押し出されたような、キョトンとした顔つき。フォークで口に運ぶ。一番大きな木を見ながら、ゆっくりと咀嚼する。あまいあじがした。からだのすみずみまでゆき渡っていく。私は白いアパートメントで森を食べている。