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薬のランチボックス。

木でできた救急箱を開けると、ほのかにバンドエイドの匂いがした。小さくて四角い空間に、薬たちはサンドウィッチやプチトマトのように行儀良く佇んでいる。真っ白な包帯は密やかに丸まり、オレンジ、グリーン、イエローのカプセルは風邪薬や頭痛薬。それらは色彩も美しく、透明のビンや長方形のパッケージに眠っている。細長い銀色のピンセットは、一度も使われた形跡がない。うちの家族はあまり薬を必要としていないようだった。口の中から出した人差し指の血は、いつの間にか止まっていた。木の蓋をゆっくりと閉じる。遠くで電話が鳴っている。私はそっと息をひそめている。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com