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彼女の印象について。

ティールームと名のつくところで、僕たちは向かい合って座っている。彼女は初めて見た時の方が、綺麗だと思った。髪の毛が風に吹かれていて、手でおさえながらしゃべっていたのがよかった。いま、あらためて正面から見ると、少し違う気がしてくる。とるに足りない近況を報告しあった頃、糊のきいた白いエプロンをしたウェイトレスが、飲み物を運んできた。銀の盆から2人分のソーダ水が置かれる。グラスの淵には小さくカットされたレモンが刺してある。ストローはグリーンのストライプだ。彼女はゆっくりとグラスを手に持ち、ストローからソーダ水を飲んだ。その瞬間、彼女は動いている時の方が美しいんだとわかった。

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電車は遅れておりますが

ふわっと映像が浮かんで、
こころが6.6グラム(当社比)軽くなる。
ワンシチュエーションでつづる、
シラスアキコのショートストーリー。

自分がジブンにしっくりくる感じの時は、気分がいい。
こころと身体が同じ歩幅で歩いているのがわかる。
いつもこんな感じで生きていきたい。

でも、かなりの確率でイライラと聞こえてくる
「お急ぎのところ、電車が遅れて申し訳ございません」。

そんな時は“ここじゃないどこか”に、
ジブンをリリースしてしまおう。
きっと気持ちの針が、真ん中くらいに戻ってくるから。

シラスアキコ Akiko Shirasu
文筆家、コピーライター Writer, Copywriter

広告代理店でコピーライターとしてのキャリアを積んだ後、クリエイティブユニット「color/カラー」を結成。プロダクトデザインの企画、広告のコピーライティング、Webムービーの脚本など、幅広く活動。著書に「レモンエアライン」がある。東京在住。

color / www.color-81.com
レモンエアライン / lemonairline.com
contact / akiko@color-81.com

◎なぜショートストーリーなのか
日常のワンシチュエーションを切り抜く。そこには感覚的なうま味が潜んでいる。うま味の粒をひとつひとつ拾い上げ文章化すると、不思議な化学反応が生まれる。新たな魅力が浮き上がってくる。それらをたった数行のショートストーリーでおさめることに、私は夢中になる。

イラストレーション
山口洋佑 / yosukeyamaguchi423.tumblr.com