皮膚の下の大合唱。
おばあちゃん家の応接間のドアをそっと開ける。足元には赤い絨毯が広がっている。外は晴れているのに、雨の日のような匂いがした。壁には大きな本棚。目当ては一番上にある百科事典だ。彼はソファーの上に乗り、やっとの思いで手に取る。絨毯の上にあぐらをかき、重い表紙を開く。“野生の動物”のページは何度も見た。百獣の王、ライオンのたてがみはオスにしかないらしい。次に“人体の神秘”というページを開く。男性の裸の絵の上には透明なフィルムが重なるようになっており、内臓や血管、筋肉などがぎっしりと描かれていた。人間の皮膚の下には、まったく別の世界が存在していた。家族の悲鳴にも似た笑い声が聞こえてくる。初めて会う他人のように感じた、家族も自分も。